日本酒の基本のキ(2/3) ~特定名称酒の種類~

「特定名称酒の種類」とは、純米酒・吟醸酒など、造り方や品位によって日本酒を分類したもので、この分類と精米歩合さえわかれば、その日本酒がどういうものなのかだいたいわかるようになり、お店でも迷うことがなくなるでしょう。

特定名称酒は一定の条件をクリアした「良い日本酒」

 お酒に関する規定やルールは、国税庁によって管理されています。酒税が関わるからですね。

 一昔前は、日本酒の表記に関する規定がなかったため、好き勝手に純米酒や吟醸酒といった表記ができたのですが、消費者からの「日本酒のパッケージだけではどのような品位のものかわかりづらい」という声をもとに、国税庁が1989年に「清酒の製法品質表示基準」を制定し(適用は翌年4月から)、いわゆる普通の日本酒である「普通酒」と、特定の条件を満たすことで”純米酒”や”吟醸酒”を名乗ることができる「特定名称酒」とに日本酒が分類されることになりました。

 また、「特定名称酒」を名乗るには、精米歩合の表記が義務付けられているため、必ず精米歩合を確認することができます。だからこそ、最初の基本のキ①で、皆さんに精米歩合について知ってもらいました。

 イメージとしては、コンビニやスーパーで売られているパック酒やカップ酒は普通酒が多く、ビンで売られているものは特定名称酒であることがほとんどです。

 もちろん例外もありますし、最近は品質の良いカップ酒も増えていますよ!

 私が皆さんに知ってほしいのは、「パック酒・カップ酒だから、たぶんそこまで美味しくないだろう」「パッケージがキレイなビンのお酒だから、たぶん美味しいだろう」みたいな印象で日本酒を判断するのではなく、パッケージに表記されている情報から正しく日本酒を判断すべき、ということです。

 精米歩合と特定名称酒の種類はほぼ必ずパッケージに表記されているので、今後は必ずチェックしましょう!

(意識的にチェックしなくても、パッケージにでかでかと表記されていることがほとんどですが…笑)

特定名称酒は精米歩合と醸造アルコールのあり/なしの組み合わせで決まる

特定名称酒は全部で8種類あり、以下のように分類されます。

 「…あれ? 6種類しかなくない?」と思ったそこのあなた、鋭いですね。笑

 上記の6種類に加えて、本当は”特別本醸造”と”特別純米”があるのですが、”本醸造”と”純米”とほぼ変わらないため、シンプルさを優先して表にしました。言葉の印象通り、”特別”とつくものは、”本醸造”と”純米”より少し上物だという認識で問題ありません。

 ここで初となる用語、「醸造アルコール」が出てきましたね。

醸造アルコールとはトウモロコシなどから造られたアルコール成分

 醸造アルコールとは、トウモロコシやサトウキビといった穀物を醸して造られたアルコールを蒸留したものを指します。蒸留工程を何度も経ることで、原料であるトウモロコシなどの風味や味わいは、ほぼ完全に消え去っています。

 醸造アルコール添加は、もともとは江戸時代に、雑菌によって日本酒が腐ってしまうことを防ぐために、アルコール度数の高い焼酎を添加していたことが始まりと言われていますが、現在では主に以下の2つの目的のために添加されることが多いです。

・味わいをすっきりしたキレのある味わいにする

 何度も蒸留された醸造アルコールは、アルコール・水以外はほとんど含んでおらず、糖分も含まれていません。そのため、醸造アルコールを添加すると、日本酒の甘さが薄まり、すっきりとした味わいになります。

・吟醸香(ぎんじょうか)を引き立たせる

 精米歩合のページにて、「精米歩合の数値の小さいもの、つまりお米をより多く削っている日本酒は、フルーティーな香りがする」と記載しましたが、吟醸香とはまさにそのフルーティーな香りのことです。醸造アルコールを添加すると、吟醸香がより引き立つ、と言われています。

純米酒かどうかは醸造アルコールが添加されているかで決まる

 パッケージに”純米”と表記できるか否かは、醸造アルコールを添加しているか否かによります。

 特定名称酒の原材料は、基本的には米、米麹、醸造アルコールしか認められていません。(もちろん、日本酒造りにはこれ以外に水や酵母などいろいろと必要ですが、原材料への表記は不要です)

 更に、純米酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒は、原材料に米、米麹しか認められません。まとめると以下のようになります。

本醸造酒・吟醸酒・大吟醸酒の原材料:米、米麹、醸造アルコール

純米酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒の原材料:米、米麹

吟醸酒・大吟醸酒は精米歩合と吟醸造りで決まる

 吟醸酒・大吟醸酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒といった、”吟醸”と付くお酒は、以下の要件を満たす必要があります。

吟醸酒・純米吟醸酒:精米歩合が60%以下で、吟醸造り

大吟醸酒・大純米吟醸酒:精米歩合が50%以下で、吟醸造り

 吟醸造りとは、「吟味して醸造すること」で、お米をより削った、つまり精米歩合の数値の小さいお米を低温でゆっくりと発酵させることで、特有のフルーティーな香り、いわゆる吟醸香を発生させた日本酒のことです。香りだけでなく、味わいもキレイで、まさに高級な造り方をした日本酒ですね。そのため、本醸造酒・純米酒と比べて、価格も高めであることが多いです。

 注意したいのは、たとえ精米歩合が60%以下/50%以下であっても、吟醸造りをしていない場合は、吟醸酒・大吟醸酒を名乗れないということです。そのため、精米歩合が60%なのに、表記が「純米酒」のお酒なんかもけっこうあったりします。

特定名称酒はそれぞれに特徴・良さがある

 最後に、特定名称酒の種類と特徴を以下の表にまとめます。

 この表を見て、こう思った方もいるのではないでしょうか。

「…結局これだけじゃ日本酒の味はわからなくない? 甘口/辛口とかはどうやったらわかるの?」と。

 おっしゃる通り、特定名称酒は日本酒の品質や味わいを測るうえでは非常に重要な要素ですが、それだけでは完全に日本酒の味わいを推測することは難しいです。

 そこで、次章では、”基本のキ”の最後の要素である、日本酒の甘口/辛口を知るうえで重要な数値「日本酒度」と、もうひとつ重要な数値「酸度」について学んでいきましょう!

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